あれは1995年頃――まだ若さと好奇心にあふれていた時代、私は一台の相棒を迎え入れました。SUZUKI DR350。
アメリカから海を越えてやってきた逆輸入車で、エンデューロレーサーとしての血筋を色濃く受け継いだ、骨太のダートバイクです。
当時通っていた、輸入車や逆輸入車を専門に扱う小さなショップの片隅で、その車両は静かに佇んでいました。
公道のために保安部品を追加すれば、競技用マシンにもナンバーが与えられる――そんな時代の恩恵を受け、彼は街の舗装路から林道、河川敷へと自由に駆け抜けることができました。

カスタマイズは少しだけ贅沢に。ホワイトブラザーズのメガロイサイレンサーで息吹を力強くし、フロント・リアフェンダーはイタリア製アチェルビスに交換。
見た目も走りも、どこか都会的でありながらオフロードの本能を忘れない佇まい。
週末のツーリングはもちろん、気まぐれに川辺でスロットルをひねり、林の奥まで探検した日々が、今でも鮮やかに蘇ります。

特に忘れ難いのは、初めて北海道へ旅した時のこと。東京を発ち、青森までひたすら自走――。
その距離、その時間、その疲労すらも、旅の記憶とともに甘美なものになりました。
到着した北海道の広い空、道の果てまで続く一本道、そしてDR350の軽快な鼓動。

あの頃、私の世界は広く、大地はどこまでも続いていた。
今となっては、その走りも感触も記憶の中にしかないけれど、ロードノイズや排気音を思い出すたびに、少し胸が熱くなるのです。

――私のDR350、ありがとう。あの時代を、一緒に走ってくれたことに。

